研究概要 |
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙科学研究本部(ISAS)で現在計画されているスピン展開型ソーラーセイルのモデルを用いて,ミッション中の各フェーズ(地球周回時,惑星間航行時)におけるソーラーセイルの姿勢運動に対して,基本的なデータを計算した.具体的には,展開の不完全性を考慮し,ソーラーセイルの質量中心-光圧中心間のオフセット量が姿勢運動/軌道運動に及ぼす影響について調べた.また,スピンレートを計画値より変化させた場合に姿勢運動に及ぼす影響の程度を調べた.さらに,姿勢/軌道制御系の有力な候補である質量中心移動方式による姿勢制御系の基本性能を確認した. 次に,計算機シミュレーションで得た外乱トルクの影響レベルを考慮しつつ,ソーラーセイル実験機検証装置について検討した.当初想定していた空気圧による太陽光圧の模擬は,乱れや渦の影響が想定される外乱レベルより遙かに大きくなることが予想されたため,重力を用いて光圧を模擬する方式に変更した.それに伴い,宇宙空間で加速するソーラーセイルに作用するペイロードの慣性力は,上方からの張力制御により模擬することにした.また実験装置では,ソーラーセイルに作用する姿勢外乱トルクを実験的に計測する一方で,外乱トルクの結果として生じる姿勢の変動はコンピュータで計算した量を実験装置に反映させる,いわゆるハイブリッドシステムとして実現する.この際,姿勢外乱トルクの計測精度が結果に大きく影響するため,センサの特性だけでなく信号処理回路についても検討した.これらの検討に基づき,現在実験装置を製作している途中である.
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