本研究の目的は、粒子法を用いて大波高波浪中の船体運動の数値解析手法を開発するとともに、実験との比較をおこなってその手法の有用性を評価することである。平成17年度は主に理論開発とプログラム開発をおこなった。平成18年度は以下の研究を実施した。 (1)大波高規則波と船体運動の相互作用の数値解析 海上技術安全研究所の曳航水槽において大波高規則波を発生させ、一定の速度で前進する模型船の運動履歴および水面挙動の詳細な画像データが得られている。これと同じ条件で3次元粒子法流体解析を実施した。なるべく効率的な計算をおこなうため、流入・流出境界こ底面の境界、および側面の境界を工夫し、10波長程度の長期にわたって3次元解析ができるようにした。 (2)船体運動の幾何学的非線形性に対する数値解析 平成17年度に開発した粒子法による船体運動解析手法では、船体運動の幾何学的非線形性、すなわち3次元空間における剛体回転の非線形性、を考慮できる。そこで海水打ち込み生じる条件での規則波と船体との相互作用の解析をおこない、船体運動のピッチングとヒービングを得た。実験結果および従来の線形解析と比較したところ、波長船長比の値が大きくなって船体運動が大きくなると、粒子法の解析では従来の線形解析よりも船体運動が小さくなった。これは実験結果の傾向と良く一致する。海水打ち込みによって打ち上げられた甲板上の水壊の重量によって、船体運動が抑制されるためであると考えられる。
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