近年、日本の食料自給率は低下しつづけており、穀物の自給率は既に30%を下回っている。消費穀物量のかなりの部分を輸入に頼っている日本にとって、農産物の安全かつ効率的輸入は重要な問題である。そのコンテナによる農産物輸送中、汗ぬれ損傷がしばしば起きている。汗ぬれ損傷の殆どはドライコンテナ輸送に限られており、支払い金額約10億円(支払い件数数百件)に達している。以上の事情より、保険業界や運送業界から汗ぬれ損傷の詳細な解明が期待され、且つ根本的な対策が強く求められている。 結露防止のために用いられるシリカゲルは高価であるため、保険によって保障を得ることで危険回避が行われている。そのような観点からも、シリカゲル使用量の削減は実用面で、特にコストの観点から極めて重要な課題である。 18年度は、汗ぬれ防止策として使用されるシリカゲル量を削減するために、積載物の表層をアルミニウムシートにて被覆することを検討した。積載物である大豆表層をアルミニウムシートにて55%被覆するだけで、シリカゲルの使用量を10分の1に削減できることが明らかになった。シリカゲルの価格に比較して、アルミニウムシートの価格は廉価で殆ど無視し得ることから、汗ぬれ防止に係わるコストは20ftコンテナ1台あたりほぼ1万円程度になり、市販の最も廉価版使い捨ての吸水シートのコストに拮抗する。また、市販の吸水シートが使い捨てであるのに対して、使用するシリカゲルやアルミニウムシートは繰り返し使用が可能であり、省資源または環境保全の点からも注目に値する。また、水蒸気の吸着・透過制御のため高分子フィルムの表面処理を行い、結露防止策として用い得ることを示しとともに、結露を検知しえる化合物をフィルムに付加するための基礎的材料の検討をおこなった。
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