研究概要 |
凍結状態にある岩石の強度を把握するために,乾燥状態と含水飽和状態にある安山岩を対象に,氷点下において一軸圧縮試験および圧裂引張試験を実施し,凍結した岩石の強度に及ぼす試験温度,載荷速度の影響について検討した。得られた知見は以下のようである。 (1)-5℃〜-20℃の温度範囲において,乾燥供試体の一軸圧縮強度と圧裂引張はともに試験温度に依存せず,それぞれ,ほぼ一定の値を示す。これに対し,湿潤供試体の圧裂引張強度σ_tは温度の低下につれやや増加する傾向を示し,-20℃のσ_tの平均値は-5℃のσ_tの平均値の約1.3倍となる。なお,湿潤供試体の一軸圧縮強度σ_cには明確な温度依存性が見られない。 (2)破断が5s〜5000s程度で起こる載荷速度の範囲では,乾燥供試体の一軸圧縮強度と圧裂引張はともに載荷速度にほとんど依存しない。これに対し,湿潤供試体の圧裂引張強度σ_tは載荷速度の増加とともに大きくなる傾向を示し,5s程度で破断した載荷速度でのσ_tの平均値は5000s程度で破断したσ_tの平均値の約1.4倍となる。なお,湿潤供試体の一軸圧縮強度σ_cには明確な載荷速度依存性が見られない。 (3)上記の乾燥供試体の結果より,岩石自身の強度は温度や載荷速度の影響をほとんど受けないと判断でき,圧裂引張強度に見られた温度と載荷速度の影響は岩石内の氷の影響であると考えられる。すなわち,氷の力学的性質が温度と載荷速度に依存し,その影響が圧裂引張強度に現われたと考えられる。一軸圧縮試験では岩石中の氷に大きな応力が作用するため,載荷中に氷が融解した可能性がある。このことが,一軸圧縮強度には温度や載荷速度の影響が見られなかった一因と考えられる。
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