研究概要 |
登別溶結凝灰岩,美唄砂岩,支笏凝灰岩を対象に,温度-20℃の下で圧裂引張試験を実施し,凍結状態にある岩石の引張強度に与える載荷速度の影響について検討するとともに,インクルージョンモデルに基づき,その破壊メカニズムについて考察を加えた。得られた知見は以下のようである。 (1)いずれの岩石においても,乾燥状態では,載荷速度の影響は無視できるほど小さく,引張強度はほぼ一定となる。これに対し,含水飽和状態では,載荷速度が遅くなるほど破断は延性的となり,引張強度は小さくなる。 (2)インクルージョンモデルに従うと,含水飽和状態の引張強度と乾燥状態の引張強度の差の載荷速度依存性は岩石によらず一定となるが,試験結果はおおむねこれと一致し,氷を含む岩石の破壊はインクルージョンモデルで説明できる。 (3)インクルージョンモデルより,空隙周囲やクラック先端での応力集中の大きさは,岩石と介在物である氷の弾性係数の違いにより決まるが,両者の差異が大きくなるほど応力集中は大きくなることがわかり,小さな荷重で破壊の発生が起こり得るため,引張強度は小さくなると考えられる。 (4)試験を実施した載荷速度の範囲では,岩石の弾性係数はほぼ一定と見做せるのに対し,文献調査の結果から氷のヤング率は載荷速度に大きく依存することが明らかとなった。したがって,上記(1)の結果は,岩石内の氷の弾性係数の載荷速度依存性により表れたものとして解釈できる。
|