研究概要 |
大気中二酸化炭素を高圧下で液化して地中に埋設することにより大気中に放出される二酸化炭素量を削減する方法を検討する目的で,室内実験を行った。Barnes型熱水反応装置の反応容器中に液化二酸化炭素及び岩石(花崗閃緑岩)と淡水(地下水)を封入し,約100気圧下で150〜200℃に加熱して反応させ,高圧バルブにより高圧下で経時的にサンプリングを行った。採水試料の化学組成を原子吸光,ICP-MS,イオンクロマト等で分析し,濃度変化を測定するとともに,反応後の岩石試料をX線,SEM, EPMAを用いて分析した。分析の結果,溶液組成は大きく変化し,反応の影響が明らかとなった。反応初期にはカルシウムイオン濃度が急増し,同時に硫酸イオン濃度も増して岩石中の石膏の溶出を示した。しかしながら,溶出したカルシウムイオンは急激に減少し,溶存二酸化炭素との反応によって炭酸カルシウムが析出したことを示した。このことは,高圧下で二酸化炭素を地中処理することにより,二酸化炭素は炭酸カルシウムとして固定され,外界への放出が妨げられることを意味する。すなわち,化石燃料として放出される二酸化炭素を地中に固定できる可能性が示されたことになる。 秋田県雄勝の花崗岩閃緑岩地熱地帯において約1000mのボーリング中に二酸化炭素を投入して水質変化を観測したフィールド実験の結果は,本実験の結果と良い一致を見た。今後は,より効率的な二酸化炭素封入に適した岩層を実験的に調べる目的で,イオン交換性カルシウムに富む凝灰岩等の各種岩石と二酸化炭素の反応実験を行う予定である。
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