研究概要 |
研究1<炭水化物とポリカーボネート(PC)の反応>:17年度にはPCとトリオールのグリセロールとの加溶媒分解を行い所期の成果、すなわちBPAとhydroxymethyldioxorane(HMDO)が定量的に得られることを見出した。引き続き18年度では、ピラノース型ペントールのグルコースとの反応においても、環状カーボネート構造を同一分子中に二つ有するグルコース・ビスカーボネートが得られることを魅いたした。このビス炭酸エステルが形成されるグルコース環上の位置は、1,2-位のほかは予想に反して4,6-位であり、それぞれ5員環と6員環が形成された。すなわちこの3環式化合物の生成において3-位の水酸基は反応に関与しないことが示された。グルコース水酸基のcis,trans立体配置、炭酸エステル環の歪み、水酸基の反応性の差が原因となり、この観測された位置選択性が出現することを明らかにした(日本化学会87春季年会発表、報告論文作成中)。立体配置の異なる他の単糖類ならびに多糖類との反応は現在進行中である。このように、炭水化物はPCの加溶媒分解における解重合試薬としてのみならず、炭酸ユニットの受け皿、すなわち炭酸等価体としても機能することを明らかにした。 研究2<ポリビニルアルコールとの反応>:研究計画1の多糖類への応用拡大と同時に、同じく典型的ポリオールであるポリビニルアルコールへ拡大した研究を進め、現在研究が進行中である。 研究3<シリコーンゴムの易リサイクル架橋結合の設計>:超臨界二酸化炭素を反応媒体、ジフェニルジスルフィドを脱架橋試薬に用いた系で、架橋天然ゴムを主成分とするトラックタイヤの化学リサイクルを行い、適度に架橋を残した混練可能なゲル成分とゴム分からなるリサイクル物質が得られた。これはブレンド法を用いて再利用可能であった。このルーズな解重合処理技法を、過去の研究でアミン系アルカリ触媒によりモノマーへ解重合することが判明しているシリコーンゴムへ適用し、架橋をルーズに切断したオリゴマー状態でサイクルさせる研究を現在進行させている。
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