研究課題/領域番号 |
17560739
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
四竃 樹男 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (30196365)
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研究分担者 |
永田 晋二 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (40208012)
鳴井 實 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (20250821)
土屋 文 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (90302215)
藤塚 正和 物質材料研究機構, 材料基盤情報ステーション, 主幹研究員 (70354230)
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キーワード | 放射線エネルギー / プロトン伝導性酸化物 / 高エネルギー中性子 / 原子炉 / 電子伝導 |
研究概要 |
放射線エネルギーを電気的エネルギーに直接変換する方法として、励起過程を利用した電荷担体の易動度の大幅な増大を利用した変換効率の増大が考えられる。本研究では、加速器、高エネルギー中性子源(FNS;14MeV中性子)、原子炉(JRR-3)を利用し、幅広い励起密度場でのプロトン伝導性酸化物セラミックスの電気伝導度評価を系統的に行い、以下の事を明らかにした。 1. 照射下での電気伝導度が大幅に増大することを確認した。照射下での電気伝導度の増大は、これまで主として電子励起効果による電子伝導の増大が幅広く研究されてきている。本研究においても、電子伝導の増大が系統的に評価されており、プロトン伝導性酸化物においても、放射線の持つ電子励起密度にほぼ比例した通常の電子伝導の増加(照射誘起電気伝導度(Radiation Induced Electrical Conductivity; RIC)が定量評価された。 2. 系統的な電気伝導度増加データの解析から、電子伝導度増加と共に、別な原因による電気伝導度の増大が系統的に見いだされた。特にこの増大は200-300C以上の高温で顕著であり、プロトン伝導(Protonic Conductivity)の増大によると解釈された。 3. 更に高温(500C以上)において、更なる電気伝導度の増大が、照射下で水素の存在の条件下で見いだされた。解析から、この増大は酸化物を構成するイオンの伝導度(Ionic Conductivity)の増大によるものと解釈される。 これらの結果と酸化物の光電子分光(XPS)などの結果とから、見いだされたプロトン伝導度、イオン伝導度の増大には、プロトン伝導性酸化物の格子中の、一部の陽イオンの価数減少(化学的には照射による還元、幅広い定義での放射線分解(Radiolysis))と関係していると理解される。このRadiolysisにより、酸化物の中には電子伝導度が下がるものがある。このことはradiolysisにより伝導に寄与できる電子の数が減少することが推測されるが、一方で、価数減少、及びそれに伴う酸素空孔濃度の増大がプロトン伝導、イオン伝導を増大させていると解釈される。 プロトン伝導性酸化物の電子伝導の抑制とプロトン伝導性の増大は、プロトン伝導性酸化物セラミックスを用いた電気発生効率の改善につながるものであり、今後、今回見いだされた現象の機構解明を通じて、放射線エネルギーの電気エネルギー変換の効率向上につなげたい。
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