本研究は、廃食油を改質して得られるバイオディーゼル燃料を高効率・低汚染燃焼させることを目標とする。廃食油中には種々の原料油脂が混入することから、改質後の脂肪酸メチルエステル(FAME)組成は大きく異なる。そこで、単組成FAMEが諸性能特性に及ぼす影響を詳細に調査した。供試燃料として、試薬のオレイン酸メチル(OME、C18:0)、ラウリン酸メチル(LME、C12:0)、ならびにOMEあるいはLMEとパルミチン酸メチル(PME、C16:0)との混合燃料を使用した。 (1)圧力波伝播速度を実測することにより体積弾性率を算出した結果、OMEの体積弾性率は軽油に比べ約7%上昇することがわかった。噴射遅れを測定した結果、OMEおよびLMEでは噴射おくれが短縮し、その差は統計的に有意であった(p<0.001)。供給熱量一定のもとで燃料噴射率を測定した結果、OMEおよびLMEの燃料噴射期間は発熱量が低下するため軽油に比べ長く、平均的な熱供給率は低下した。 (2)未使用の菜種油、大豆油、およびパーム油を原料とするバイオディーゼル燃料を作製して実験を行い、機関性能、燃焼特性、排出物特性に及ぼす原料油種の影響度合を明らかにした。FAME燃料は高負荷時に軽油と同等の正味熱効率が得られる一方、黒煙濃度は負荷の全領域で顕著に低減した。OMEおよびLMEをベース燃料として、これとPMEとの混合燃料を作製した結果、PMEの着火特性改善効果が顕著であった。 (3)単一油滴燃焼特性を調べた結果、OMEにPMEを混合することで着火遅れは顕著に短縮する一方、燃焼速度係数は7%程度増加することがわかった。また、油滴燃焼で生成したスートをガラス繊維製ろ紙に捕集して質量を測定し評価した結果、供試FAMEのスート生成率は軽油の15%以下にまで低下することが明らかになった。
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