主要なリン脂質を合成する酵素のほとんどが枯草菌では細胞分裂隔壁部位に局在することを本申請者らは明らかにしている。これら主要なリン脂質の合成酵素は、如何にして隔壁部位に集まるのであろうか。どのような因子がこれらのリン脂質合成酵素を隔壁部位に局在させる役割を果たすのであろうか?この課題に対して、17年度は、以下の項目IとIIの2方向から研究計画を実施した。 I.リン脂質合成酵素を細胞分裂隔壁の細胞質膜に局在化させる因子の探索 各リン脂質合成酵素の局在がFtsZや細胞分裂タンパク質・酵素等の存在に依存するか否かをまず明らかにし、依存関係の有無を明確にすることを第一の目的とする。このため今年度は、細胞分裂に大きな影響を与えないが、細胞分裂に関与することが明らかにされているタンパク質を欠損する変異株細胞を用い、リン脂質合成酵素-GFPの局在の変化を検討した。検討した6種の細胞分裂タンパクのひとつの欠損により、GFP融合体の正しい隔壁への局在が乱される場合があることを見出した。 II.膜リン脂質合成酵素を隔壁部位に局在させる酵素タンパク質内の機能領域の解明 リン脂質合成酵素が細胞分裂隔壁部位への特異的局在を実現するには、このために働く特定の領域が酵素タンパク質内部に存在することが期待される。本年度は枯草菌のCL合成酵素とその直上流のPGP合成酵素に注目して、膜貫通ドメインの両端域や両親媒性のヘリックス領域を欠失させた一連の変異タンパク質-GFP融合体を構築し、細胞内局在の変化を解析した。両酵素ともにC末端側に局在するために必須の領域があることを明らかにした。タンパク質の膜貫通ドメインの両端領域や両親媒性ヘリックス領域は、細胞質膜の脂質二重層表面の極性基部位に接することから、C末端側にあるこれらの領域が脂質極性基の認識に関わる可能性に注目し、現在検討している。
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