研究概要 |
主要なリン脂質を合成する酵素のほとんどが枯草菌では細胞分裂隔壁部位に局在することを本申請者らは明らかにしている。これらのリン脂質合成酵素は、如何にして隔壁の細胞質膜に集まるのであろうか。どのような因子がこれらのリン脂質合成酵素を隔壁部位に局在させる役割を果たすのであろうか?これらの課題に対して、18年度は、以下の項目IとIIの2方向から研究計画を実施した。 I.リン脂質合成酵素の細胞分裂隔壁の細胞質膜への局在と相互作用 各リン脂質合成酵素の局在がFtsZや細胞分裂タンパク質等の存在に依存するか・相互作用があるか否かを明らかにすることが本研究の第一の目的であるが、枯草菌のリン脂質合成の最初の過程(リゾホスファチジン酸合成)には、まずアシルリン酸を合成し、これを基質として用いアシル基をグリセロール3リン酸に転移する、新たな酵素系(PlsX-YneS)が存在することを分子遺伝学的、また酵素学的な検討により見出した(脂質生化学研究2007投稿中)。このため本年度は、リン脂質合成の初期過程の酵素とタンパク質PlsX,YneSおよびアシルキャリアータンパク(ACP)等のGFP融合による細胞内局在と相互作用を中心に検討することとした。その結果、YneSは他のリン脂質合成酵素と同様に隔壁の強く局在するが、PlsXについては不均一な局在が見出された。また、PlsXとYneSは相互作用すること、PlsXは多量体となること、ACPとの相互作用は検出されないことが大腸菌two-hybrid法による解析から明らかになった。 II.膜リン脂質合成酵素を隔壁部位に局在させる酵素タンパク質内の機能領域の解明 リン脂質合成酵素が細胞分裂隔壁部位への特異的局在を実現するには、このために働く特定の領域が酵素タンパク質内に存在することが期待される。昨年に続き本年度はCL合成酵素、PGP合成酵素に注目し、膜貫通ドメインの両端域やCOOH末端の両親媒性へリックス領域を欠失させた一連の変異タンパク質-GFP融合体を構築し、更にWestern法による融合タンパクのsizeと量の確認をも加え、局在の変化を解析した。両酵素ともにCOOH末端に局在するために必須の領域があることを明らかにした。PGP合成酵素ではCOOH末端近くの膜貫通領域近傍が局在に関わる可能性を示唆した。
|