高等生物の機能的動原体にはCENH3と呼ばれるピストンH3の変異体が存在する。米国のTalbert博士よりイネのCENH3に対する抗体の分譲を受け、間接蛍光抗体法によりオオムギにおけるCENH3の染色体局在を確認したところCENH3は機能的動原体が形成される一次狭窄に局在することが明らかになった。さらに、同抗体を用いてクロマチン免疫沈降法を行った。その結果、正常オオムギ染色体の機能的動原体部位においてCENH3はオオムギでこれまで報告されてきた動原体特異的反復配列である(AGGGAG)nサテライト配列とcerebaレトロトランスポゾンと相互作用していることが明らかになった。スロットハイブリダイゼーションにより、抗CENH3タンパク質抗体による免疫沈降物にはcerebaレトロトランスポゾンと比較して(AGGGAG)nサテライト配列のほうが量的に多く含まれていることが示された。この結果は、スピンドルチェックポイントタンパク質であるMAD2が(AGGGAG)nサテライト配列と共局在するという細胞学的観察と矛盾しない。構造異常オオムギ染色体7HS*は上述の(AGGGAG)nサテライトもcerebaレトロトランスポゾンもFISHレベルで検出されない。この染色体の動原体領域に存在するDNA配列を特定するため、フローソートした7HS*染色体からテロメア近傍配列を増幅しプラスミドベクターに組み込んだ。このライブラリーからランダムに選択したクローンの塩基配列解析を行った。また、オオムギ7H染色体の動原体領域に切断点を持つテロソームをEST配列のマッピングにより解析したところ、7HS染色体の動原体を挟む2個のEST配列を特定した。
|