IncI1プラスミドR64の54kbの接合伝達領域は、49個の遺伝子を含む。そのうち24遺伝子が表面接合伝達に必須であり、液内接合伝達にはさらにIV型線毛をコードする12個のpil遺伝子が必要である。IV型線毛の先端に局在するPilVアドヘシンのC末部はシャフロンのDNA多重逆位により7種に変換する。 1.R64のプレピリンペプチダーゼをコードするPilU遺伝子の42株の突然変異株を分離し、PilUの構造と機能の関係を明らかにするとともに、PilUがアスパラギン酸ペプチダーゼであることを証明した。 2.接合伝達遺伝子群発現の正の調節遺伝子TraCが組換え酵素RciのC末部に作用することにより、シャフロン組換えの頻度を負に調節していることが示唆された。 3.シャフロンの組換え配列sfxは、他の組換え系と異なり非対称であることが明らかになっている。一方、シャフロンにより調節される7種PilVアドヘシンの発現は一定ではなく、平衡状態ではPilVA、PilVA'の発現が高い。それぞれ左右アーム配列の異なる2種のsfx配列を両端にもつミニシャフロンでは、Rciの存在下で平衡時に正逆いずれかにずれていることが示された。これはsfx配列の非対称性が、7種PilV発現量の相違の原因になっている可能性を示す。 4.R64の接合伝達はNikABタンパクによるoriTへの特異的ニックの導入で開始する。oriT結合タンパクNikAのNMR解析を行った結果、NikAのアミノ末端側51残基の領域が二量体を形成して、リボン-ヘリックス-ヘリックス(RHH)のDNA結合構造を形成していることが明らかとなった。SELEX法によりoriTコア配列中のACGGTA配列がNikA認識配列となることを推定した。
|