1 性決定・性分化に関わる遺伝子座におけるクロマチン構造の解析 (1)Sry遺伝子座 マウス胎生11日の生殖隆起を用いたChIP解析を行った。Sryプロモーターおよび遺伝子上流下流5kbの範囲において、500bpおきにプライマーを設定したが、有意なシグナルは得ていない。更に解析領域拡大のためTiling Arrayによる解析を検討している。 (2)Sox9遺伝子座 マウス胎生11日の生殖隆起を用いたChIP法により、Sox9プロモーターにおいてM33、トリメチルK28ヒストンH3の集積を認めた。 (3)Lhx9遺伝子座 マウス胎生11日の生殖隆起を用いたChIP法により、Lhx9プロモーター上流2kb領域においてM33、トリメチルK28ヒストンH3の集積を認めた。 (4)Ad4BP/Sf-1遺伝子座 Ad4BP/Sf-1遺伝子座転写開始点下流領域におけるM33、トリメチルK28ヒストンH3の集積状態を、マウス胎生11日の生殖隆起を用いたChIP解析をおこなった。その結果、プロモーターおよび上流領域よりも強いシグナルが転写開始点下流2〜4kbに検出された。この領域はCpGアイランドに該当することから、これまで多くの遺伝子座で示されて来たM33によるヒストン修飾による制御とともに、DNAメチル化を介した標的遺伝子発現制御の可能性を示唆する。 2 M33機能領域の遺伝子改変マウスの作成および解析 前項目(4)を受けて、Ad4BP/Sf-1遺伝子座転写開始点下流領域2kbを含むAd4BP/Sf-1プロモーターの発現がモニター可能なEGFPトランスジェニックマウスを作成した。M33が存在する正常マウス胚では、胎生11日の生殖腺体細胞においてはEGFP発現が認められた。しかし、M33KOマウス胚では、当該領域依存的発現は消失あるいは減弱した。この結果は、in vivoにおいて、Ad4BP/Sf-1遺伝子転写開始点下流領域を介したM33によるAd4BP/Sf-1遺伝子発現制御機構を強く示唆する。今後は、計画当初予定した当該領域改変マウスの作成をおこなう。
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