研究概要 |
まず,資源をめぐる種間競争がショウジョウバエの群集構造・地理分布に及ぼす影響を調べるため,幼虫の競争実験を行った.その結果,種間競争は種内競争に比べ必ずしも強いとは言えず,資源競争が群集の構造化,分布の制限に大きな影響を及ぼしているとは考えられなかった.続いて,巻き添え競争について研究を進めるため,天敵である寄生蜂の日本における分布,種構成を調べた.その結果,果物を繁殖場所とするショウジョウバエの幼虫の寄生蜂として,Braconidae6種,Figitidae科6種を確認することができた.そこで,これらの寄生蜂を日本各地から採集し,飼育系統の作成を試みた.その結果,Asobara japonicaの系統を札幌,東京,奄美大島より,Leptopilina victriaeの系統を西表島より作成することができた.これらの寄生蜂を介した巻き添え競争があるかどうかについて調べるためには,まず,これらの寄生蜂の寄主選択についての情報が必要である.そこで今回は,A.japonicaがオナジショウジョウバエ,フタクシショウジョウバエ,オオショウジョウバエに寄生できるかどうかについて調べた.その結果,オナジには寄生可能であったが,フタクシ,オオには寄生できなかった.次に,寄生できないのは,寄生蜂がこれらのショウジョウバエに卵を産まないことによるのか,産んでも幼虫体内で殺されるからなのかについて調べた.その結果,オオには卵をあまり産まず,また産んでも殺されること,フタクシにはよく卵を産むが,そのあと殺されることが分かった.次年度はさらに多くの寄生蜂,ショウジョウバエを使い,寄生蜂の寄主選択について調べるとともに,その結果を基づき,巻き添え競争について実験を行う予定である.
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