研究概要 |
昨年度に引き続き,西表島の果物で繁殖するショウジョウバエ間において,寄生蜂を介した巻き添え競争が起こりうるかどうかを調べた.昨年度はAsobara属の2種(A. japonica, A. pleuralis)とについて調べたが,今年度はLeptopilina属の1種(L. victoriae)について調べた.その結果,L. victoriaeはA. pleuralisに似た寄主選択をもつことが明らかになった.昨年と今年の研究をまとめると,A. japonicaは人家における優占種であるD. takahashiiを主な寄主とし,A. PleuralisとL. victoriaeは森林内における優占種であるD. albomicansを主な寄主としていることが明らかになった.これら3種の寄生蜂はD. lacteicornisにも寄生可能であるため,D. lacteicornisは寄生蜂を介してD. takahashiiとD. albomicansの影響を受けている可能性がある.実際,西表島においてはD. lacteicornisの個体群は大きくなく,これはこれらの寄生蜂を介したD. takahashiiとD. albomicansとの巻き添え競争の結果である可能性がある. 次に東京周辺において優占するGanaspis xanthopodaが巻き添え競争に関与しているかどうかについて調べた.本種はさまざまなショウジョウバエ種に寄生可能であるとされており,ショウジョウバエ間の巻き添え競争に関わっている可能性がある.研究の結果,これまでG. xanthopodaとされていたものは,いくつかのホストレースに分かれることが示された.各ホストレースの寄主は限られており,そのため,本種は必ずしも巻き添え競争に強く関わっている訳ではないと考えられた.もっとも,G. xanthopodaのホストレースについてはまだまだ情報不足であり,さらなる調査が必要である. 以上の結果をまとめると,ショウジョウバエ間において寄生蜂を介した巻き添え競争は起こりうるが,それは必ずしも強いものではない.それは,寄生蜂の寄主に対する選好性が狭いことまた,自然界でも寄生率がそれほど高くないことによる.
|