生物学的侵入(biological invasion)は、非自生生物が人為により移入されその生態系に定着することを指す。特に、撹乱の強い遷移初期において生物学的侵入は顕著であり、その侵入機構には、微地形から景観レベルまで様々なスケールに依存する生物的・非生物的要因が階層的に関与している。本研究は、生物学的侵入が顕著である渡島駒ヶ岳と、それに近接するが生物学的侵入が検出できない有珠山において、比較研究を行ない、スケール依存性環境要因とその相互作用、生物学的侵入種および在来種の生育特性を解明することを目的に行なった。本研究における論文に公表した主な成果は(1)-(4)の通り。 1)駒ヶ岳1996年噴火被害地では、有珠山と同様に、有性繁殖よりも栄養繁殖の方が植物群集回復に寄与している。また、様々な生息地において微地形が群集発達に重要である。 2)菌根菌の定着は、標高勾配に沿い変化する種が存在する。これまで、内生菌根の発達未報告数種から内生菌根菌定着を確認した。カラマツ成長に対する菌根菌の寄与は低かった。 3)埋土種子の生存・発芽特性の時間的変化には、それまで体験していた環境が大きく関与する。 4)生物学的侵入種は実生段階において、強風・土壌乾燥・貧栄養などの様々な撹乱やストレスに対応して、在来種よりも高い可塑性を示すことにより生存率が高い。 これらの成果をもとに、スケール間の相互作用(トップグウンーボトムアップ効果)の解析を行った。本科研費により購入したウェザーステーションを駒ヶ岳3標高に設置し気象観測を行った。これらの結果を組み合わせ、土壌湿度・微地形等の環境と種子分散・発芽・定着・成長過程でのスケール別の相互作用定量化を完了させた。
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