研究課題
1.強酸性湖潟沼生態系の研究においては、生産者としての植物プランクトンと底生珪藻、また消費者としてサンユスリカ幼虫が各1種のみという酸性湖の単純な食物連鎖を利用して、消費者の餌の選択性について調査した。潟沼から分離した植物プランクトンと底生珪藻を餌とした摂食実験により、サンユスリカの炭素・窒素の同位体分別を測定し、そのデータを用いたミクシング・モデルにより選択的同化について調べた。その結果、サンユスリカは底生珪藻よりも植物プランクトンをより選択的に同化することが分かった。また、潟沼のサンユスリカ幼虫の餌は生息水深により変化し、水深が浅い場所では底生珪藻を、深い場所では植物プランクトンを多く利用することが分かった。2.河口域生態系の研究においては、仙台湾七北田川河口の蒲生潟を調査地として大型底生動物の餌資源の解析を行った。まず、餌物質として、POM(水中懸濁有機物)、SOM(堆積有機物)、海藻オゴノリとその付着物、塩性湿地植物のヨシ、また底生珪藻を堆積物から分離して、炭素・窒素安定同位体比を測定し、異なる地点から代表的な底生動物を採集し、その同位体比と比較することにより、底生動物が同化している餌物質を推定した。その結果、底生動物は潟内部で生産された微小藻類を主な餌としていることが分かった。また、既往の文献から堆積物食者とされている種の一部には実際には肉食と考えられるものがいること、懸濁食者はPOMと同様に底生珪藻もかなりの程度同化していることが分かった。3.河川生態系の研究では、河川の源流域において、水質が酸性(pH=5.3-5.6)と中性の河川を選び、そこに生息するトビケラ類の餌物質の推定を行った。その結果、トビケラ類は水質に関係なく外来性の陸上植物由来の有機物を主な餌としていることが分かった。
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