1.シロアリの単為生殖能と単為発生個体のカスト 日本産ヤマトシロアリ属4種とネバダオオシロアリ、コウシュンシロアリ、およびヤマトシロアリ地域個体群で単為生殖能を調査した。前6種は単為生殖能を持たなかった。ヤマトシロアリは地域によらず単為生殖可能であり、単為発生した子は全て雌ニンフに分化した。ヤマトシロアリでは、地域個体群問の系統関係をmt遺伝子の分子系統解析から明らかにした。 2.カスト決定遺伝モデルの検証 山口県と沖縄本島に分布するカンモンシロアリとオキナワシロアリを用いて、ワーカー型・ニンフ型の幼形生殖虫の雌雄を組み合わせ、4通りの交配実験を行った。生まれた卵は雄ワーカーに育てさせ、分化するカストを調べた。前者では、各交配区とも仔虫のカスト・性の比率はほぼ整数比となり、ヤマトシロアリで考案されたメンデル遺伝モデルの期待値と有意差がなかった。後者は実験継続中であるが、ほぼ同じ結果が得られ、ヤマトシロアリ属に共通の遺伝的カスト決定機構の存在が示唆される。オキナワシロアリでは卵段階でフェロモンによるワーカーの誘導もあるかもしれない。 3.カストと連鎖した遺伝マーカーの探索 性とカストの異なるヤマトシロアリ個体に対して、AFLP法で多型検出を試みた。21のプライマー組で316の多型バンドを検出し、マッピングのための基礎データを得た。カスト特異的多型バンドは検出されなかったが、オスで現れる性特異的マーカーを初めて発見した。今後STS化により、卵や若齢幼虫の性比調査へも利用可能である。またパルスフィールドゲル電気泳動の条件設定を行い、性染色体を分離してマーカーの設計を行える見通しを立てた。 4.野外におけるコロニー構造とカスト比 茨城県東海村で、マイクロサテライトとmt-DSCPを用いてヤマトシロアリ野外コロニーの遺伝構造の調査を行った。コロニー範囲を推定し、そのカスト比を明らかにした。
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