研究概要 |
(1)卵の形状と孵化率の調査 フタモンアシナガバチの女王とワーカーの卵の短径・長径を計測した後、ふたに穴を開けたPCRチューブで管理して孵化率を測定した。女王が産んだ卵の短径はワーカーが産んだ卵の短径よりも有意に大きく(2-Way ANOVA,P=0.04)、コロニーの効果は認められなかった(P=0.13)。長径はカスト間に有意差は認められず(2-Way ANOVA,P=0.32)、コロニーの効果も認められなかった(P=0.06)。孵化率はカスト間に有意な違いは認められなかった(ロジスティック回帰,x^2=0.01,P=0.93)。コロニーの効果も認められなかった(ロジスティック回帰,x^2=0.50,P=0.97)。以上のことから、卵の形状はカスト間で違いが見られたが、孵化率は違いが認められないことが明らかとなった。 (2)化学分析 フタモンアシナガバチの卵識別メカニズムについてGC-MSを用いて科学的に分析を行った。Dufour腺は1時間、卵は30分間抽出した。体表物質はヘキサンを体にかけて洗い流した。使用したカラムはHP-5MS、昇温プログラムは150℃2分→7℃/分→320℃5分とした。いずれのサンプルからも多くの炭化水素が検出された。Dufour腺と卵には多くの物質が共通していた。特によく共通していた物質は,次の7種類であった;(1)2-MeC_<28>、(2)n-C_<29>、(3)11-,13-,15-MeC_<29>、(4)11-,13-,15-MeC_<31>、(5)11-,13-,15-MeC_<33>、(6)13-,15-,17-MeC_<35>、(7)13-,19-diMeC_<35>。 これらの物質は体表成分からも抽出された。
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