本研究では、小川学術保護林(茨城県北茨木市)とその周辺の600ヘクタールで、密度の低い樹木であるハリギリを材料に花粉による遺伝子流動パターンを決定する要因を植物と送粉者の遺伝解析から明らかにすることを目的としている。ハリギリは個体レベルで雄期と雌期が分離しているため雌期の花に訪れている送粉者には自家花粉がつかず、訪花昆虫がどのような花粉を運んできているのかを探るのに適した材料である。17年度は7月から8月にかけて雌花に運ばれてくる花粉を調べるために、原生林6ヘクタールプロットの中の3本の木に登り、フェノロジーを観察するとともに、雌花で訪花昆虫を約700個体採集した。ハリギリは、1本の木の中で同調して、雄ム雌ム雄ム雌の開花順序を示した。また1つのステージは3日程度続いた。秋には3回の野外調査を行い、黒く熟した計約5000個の種子をサンプリングした。水浸による選抜を行ったあと、生態学研究センターの温室において種をまいた。この花粉と種の遺伝子型を決定し違いを調べることで母樹が種の遺伝子型にどのような影響を与えるのかを調べることができる。マイクロサテライト分析を行うために遺伝分析については広島大学で予備実験を行った。先行研究で明らかになっている7遺伝子座のマイクロサテライトを対象にマルチプレックスPCRキットを用いた増幅、AB3100による断片長の変異検出などの予備実験を行い、ほぼ使えることが確認できた。花粉からの遺伝子抽出については、現在予備実験を行っているが、成功率が低いので、現在成功率を上げるための方法を検討中である。
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