研究概要 |
マイクロサテライト遺伝子座マーカーの開発:ヒラタヤスデ成体から市販の抽出キットを用いて総DNAを抽出し制限酵素EcoRIを用いて切断,両端にEcoRIの突出端を持つアダプターDNAを結合させた。このDNAを熱変性により一本化させ,マイクロサテライト領域をビオチン標識したマイクロサテライトプローブと結合させ,磁性粒子とプローブを結合させた。洗浄後,熱変成によりプローブと標的DNA断片を乖離させ,標的断片を回収した。アダプター配列用のプライマーを用いて回収断片をPCR増幅し,制限酵素で再び切断後,ベクターに組み込んだ。このベクターを大腸菌に取り込ませ,取り込んだクローンを抗生物質を用いて識別し。マイクロサテライトプローブを用いてスクリーニングを行い,ポジティブなクローンの挿入配列をシーケンスにより塩基配列決定を行った。得られた4つのマイクロサテライト領域の多型のチェックを行ったところ,残念ながら親子判定に利用可能なものは見いだされなかった。来年度も引き続き,親子判定に利用可能なマイクロサテライト遺伝子座マーカーの開発を行う予定である。 野外における雄の繁殖成功変異:繁殖盛期に野外で抱卵雄を採集,野外に準じた条件で室内飼育して,ブルードサイズ,孵化開始までの期間,孵化開始から終了までの時間を測定した。ブルードサイズと孵化開始から終了までの時間は雄個体間で大きく変異し,100卵を越える卵塊,あるいは2週間以上に渡って孵化が間欠的に続く卵塊が散見された。これらは,「重複ブルード」の可能性が高いと考えられた。雄親と孵化幼虫は無水アルコール中に保存し,来年度以降の親子判定の試料とする予定である。また,採集された抱卵雄の体節数は大きく変異し,体節数の多い雄ほどブルードサイズが大きくなる傾向が検出された。これは,雌による配偶者選択の存在を示唆する結果であり来年度以降の検証課題である。
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