研究概要 |
外来種のアカミミガメと在来種のクサガメの潜水生態の違いを明らかにするため,山梨県上野原市内の桂川で捕獲した両種の個体に潜水深度・水温を記録するデータロガーを装着して,利用水深と水温を調べるとともに,水槽実験を行なって,両種の利用水深での採食速度の比較をおこなった。捕獲した個体はアカミミガメ7個体,クサガメ6個体だった。 潜水深度はクサガメのものが得られたが,クサガメの潜水深度はほぼ1日中50cm以内で,水温の変化から読み取る限り,周辺温度が高くなると潜水を行なっていた。また,日の出のころに水深200cm程度の潜水を数回繰り返した。 水槽実験によれば,アカミミガメとクサガメでは利用水深が異なり,アカミミガメのほうが比較的長い潜水で広い範囲を移動していたのに対し,クサガメはある深さを単純に往復することが多かった。また,潜水の頻度もアカミミガメのほうがクサガメよりも多く,一般的にアカミミガメの利用範囲はクサガメの利用範囲を含むことが示された。それに対して,それぞれの種の採食速度を比較するとアカミミガメの採食速度は深いところと浅いところでそれぞれ0.12g/分と0.36g/分だったのに対して,クサガメでは0.28g/分と0.54g/分だった。これらの結果は,アカミミガメの潜水生態はクサガメと重なる部分が多いために両種は競争関係に成りうること,競争関係になった場合,狭い利用範囲のクサガメは早い採食速度で餌資源を確保することで,アカミミガメに競争排除される可能性を小さくしている可能性があること,を示唆している。 また,今回の研究では,これらの知見をもとに潜水生態の異なる動物の餌利用についての数理モデルを作成し,検討した。
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