研究概要 |
留鳥であるウグイスにとって夏鳥ホトトギスの托卵は繁殖の成否に大きく影響する.今年度は,托卵を回避するためにウグイスが持っていると予想される対托卵戦略を広く検討した.ウグイスは直接的なホトトギス卵の排除を行わないため,托卵されやすい場所を避けて営巣する行動とホトトギスを巣の近くから追い払う行動が見られるかを調べた.また,ホトトギスの渡来前(4月)と渡来後(6月)で巣場所選択や巣の防衛強度が変化するかどうかを調べた.調査・野外実験は,東京都三宅島で行った. 巣場所の特性(高さ・見えにくさ・植生密度等)をホトトギスの渡来前後で比べると,渡来後に作られた巣の方が見えにくい場所にあった.しかし,托卵の有無と巣場所の特性の間には関係が見られず,ウグイスが巣場所を選択することによって托卵を回避しているかどうかは明らかにできなかった. 巣の防衛行動を調べるため,ホトトギスとキジバトの剥製を巣の前に置いてウグイスの反応の強度を測定した.反応はキジバトよりもホトトギスに対して明らかに強く,ホトトギス渡来前後で比較すると渡来後で反応が強くなっていた.渡来後についてみると,托卵を受けた個体は受けなかった個体よりも防衛行動が弱かった.これらのことから,ウグイスが巣の防衛という対托卵戦略をもち,それは托卵回避に機能していることが明らかとなった. ウグイスはホトトギス渡来後に,見えにくい場所に営巣したり巣の防衛を強化したりしており,托卵鳥との渡り性の違いによって,対托卵行動を調節していることが示唆された.留鳥であるウグイスと夏鳥であるホトトギスの繁殖開始時期の差は,ウグイスの対托卵戦略に大きな影響を及ぼしていると考えられる.
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