研究課題
植物が行う光合成において、集められた光エネルギーは直列に並ぶ2つの光化学系により化学エネルギーへと変換される。このとき、光合成反応を最適に行うためには、光化学系Iと光化学系IIの励起のバランスをとらなければならない。この両光化学系の集光能力を瞬時に最適化する仕組み、ステート遷移(state transition)の分子基盤について、前年度に引き続き詳しく調べた。前年度、両光化学系間をシャトル移動する3種類のクロロフィル結合タンパク質が結合した光化学系1超複合体(A3')の単離に成功したが、本年度はまず、この超複合体A3'と3種類のクロロフィル結合タンパク質非結合の光化学系I超複合体(A3)における励起エネルギー移動を調べた。蛍光スペクトルのピコ秒時間分解解析より、100ps以下の比較的速い時間領域では、移動してきたクロロフィル結合タンパク質に光化学系Iがエネルギーを渡していること、100ps以降の遅い時間領域では逆に移動してきたクロロフィル結合タンパク質から光化学系Iにエネルギーが渡されることが明らかとなった。これらの結果は、ステート遷移以前に光化学系IIとの間でエネルギーの受け渡しを行ってきたでクロロフィル結合タンパク質は、ステート遷移以後、予想通り光化学系1複合体との間でエネルギーの受け渡しを行っていることが確認された。また、ステート遷移を含む、光環境適応機構の生理学的な解析を、さまざまな変異株を用い偏調蛍光光度計により詳しく調べた。その結果、明期では高エネルギー依存の蛍光消光が、暗期を継続すると、葉緑体呼吸に依存したステート遷移による蛍光消光が誘導されることが明らかとなり、これまで調べられて来なかった高等植物と異なる緑藻の光環境適応戦略が明らかとなった。
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Photosynth. Res 84 (in press)
Mol. Cell. Biol. 26
ページ: 863-870