前年度、Lhcb1プロモーター・ホタルルシフェラーゼ(以下LUC)融合遺伝子を導入したアラビドプシス形質転換体株(CLUC株)を用い、100μM程度の白色光下でノルフラゾン(NF、カロチノイド合成阻害剤で、強光下で葉緑体が光酸化を起こす)処理しても、高いLUC活性を示す突然変異体候補を約600株得た。これら候補のうち、クロロフィルレベルが低下した株については、大部分がgun5変異体アリルであることが判明した。これらアリルについてGUN5遺伝子の塩基配列を解析し、突然変異部位を同定した。突然変異部位と、Mg-chelatase活性およびgun表現型の相関性について比較を行った。その結果、Mg-chelatase活性とgun表現型には相関性が無い場合があることが分かった。一方、クロロフィルレベルに影響が見られない突然変異体候補については、その変異遺伝子座のマッピングを進めた。その結果、GUN1など既知の遺伝子座に加え、新規と思われる変異遺伝子座を2つ同定することができた。現在、これらについてさらに詳細なマッピングを行っている。 クロロフィル合成系変異体chlMおよびcrd1では、MgProtoおよびMgProtoMeが通常より高レベルで蓄積していることが分かっている。chlMgun4 chlMgun5ならびにcrd1gun4およびcrd1gun5二重変異体について、クロロフィル中間体レベルを調べると、いずれの二重変異体においてもMgProtoおよびMgProtoMeレベルが上昇することが分かった。このレベルは、gun4あるいはgun5単独変異で観察されるレベルよりもはるかに高く、野生型株で見られるレベルと同等あるいはそれ以上であった。一方、gun表現型については単独変異体と同等であった。この結果から、MgProto(Me)レベルが高くなるとLhcb1の発現に抑制的に働くとの従来の仮説は誤りであることが分かった。
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