申請者は申請期間中に、FRET効率の高いCa^<2+>センサータンパク質yellow cameleon 3.6(YC3.6)遺伝子を導入したシロイヌナズナを作出し、アブラナ科植物の和合受粉過程における雌蕊乳頭細胞と花粉の細胞内Ca^<2+>濃度変動をモニターする系を構築した。この形質転換植物を使ってモニターした結果、花粉では発芽前に乳頭細胞との接触部位でCa^<2+>濃度勾配が形成されること、乳頭細胞では花粉(管)の吸水・発芽・侵入に伴ってダイナックなCa^<2+>濃度変動がおきることが明らかになった。また、花粉表層物質単独で、乳頭細胞のCa^<2+>濃度変動がおきることも明らかになった。これらの結果は、和合受粉時における乳頭細胞と花粉間の認識反応の下流でCa^<2+>を介した情報伝達系があることを示唆している。そこで、Ca^<2+>濃度変動に関連すると予想される様々な生理的変化をモニターする系を新たに構築した。 1.受粉過程における水およびCaイオンの移動をモニターする系(平成16年度) 2.受粉過程におけるアクチンの再構築をモニターする系 3.受粉過程における液胞の動態をモニターする系 以上のモニターを行った結果、和合受粉時にはアクチンの重合・束化が促進されること、アクチンの脱重合が和合受粉反応を阻害すること、アクチンの再構成と共に液胞の形態変化が起きることが明らかになった。またアクチンの再構成は花粉表層物質単独でも誘導されたことから、花粉表層には、Ca^<2+>濃度変動を誘導するだけではなくアクチンの再構成や水の移動に関わる物質(和合シグナル)が存在することが示された(Plant Physiol.in press)。従って、花粉表層物質に含まれる和合シグナルを特定することと、それにより誘導される上記の生理変化に関わる遺伝子を特定することが、和合受粉過程の解明に必須であることが明らかになった。
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