研究課題/領域番号 |
17570040
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
西山 佳孝 愛媛大学, 無細胞生命科学工学研究センター, 助教授 (30281588)
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研究分担者 |
戸澤 譲 愛媛大学, 無細胞生命科学工学研究センター, 教授 (90363267)
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キーワード | 光合成 / 光化学系II / 修復 / 酸化ストレス / タンパク質合成 / エロンゲーションファクター / 無細胞タンパク質合成系 / ラン藻 |
研究概要 |
光合成は酸化ストレスに対してきわめて感受性が高い。これまでその原因は、活性酸素による光化学系IIの損傷だとされてきたが、研究代表者は、活性酸素による光化学系IIの修復阻害であることを明らかにした。さらに、活性酸素の主なターゲットが修復に必要なタンパク質の新規合成、特にペプチド鎖伸長反応であることを明らかにした。本研究では、ペプチド鎖伸長の要となるエロンゲーションファクターG(EF-G)に焦点を絞り、活性酸素によるタンパク質合成の阻害のメカニズムの解明、およびタンパク質合成系の改変による酸化ストレス耐性の向上を目指した。 ラン藻Synechocystis sp.PCC 6803からin vitro翻訳系を調製し、活性酸素によるタンパク質合成の阻害とEF-Gの酸化との関係を生化学的に解析した。あらかじめ過酸化水素で阻害しておいたin vitro翻訳系に還元型のEF-Gタンパク質を添加することによって翻訳活性が回復した。この結果から、EF-Gの酸化がタンパク質合成阻害の要因になっていることが示唆された。 さらに、EF-GのCys残基をSerに改変した組み換えタンパク質を解析することにより、EF-Gの酸化が特定のCys残基のジスルフィド結合の形成に由来し、そのジスルフィド結合はチオレドキシンにより還元されることが明らかになった。このことにより、チオレドキシンからEF-Gへ至るレドックスシグナルの存在と、活性酸素によるレドックス制御の妨害が示唆された。 別種のラン藻Synechococcus sp.PCC 7942でEF-Gを過剰発現させた。過剰発現株ではタンパク質合成の酸化ストレス耐性および光化学系IIの光阻害に対する耐性が増大していた。したがって、タンパク質合成系を改変することにより、酸化ストレス耐性を向上させる可能性を示すことができた。
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