従来植物では、フィトクロムと青色光受容体が独立に固有の吸収波長域の光シグナルに対応して情報を伝達し、時には協調的に、時には競合的に光形態形成反応の調節を行っていると考えられてきた。しかしながら我々は、独立に受容されると考えられていた波長域の光を一分子内で受容できるレセプター(PHY3)の存在の可能性を提示した。そこで本研究課題では、この可能性を植物体での生理機能として検証することを目的とする。PHY3が赤色光受容体・青色光受容体としての機能を有しているかどうかを検証するために、本年度はシロイヌナズナphot1-5 phot2-12重突然変異体に、以下に記す7種の遺伝子発現用ベクターを構築・導入した。 (i)PHY3遺伝子(ii)PHY3(C303S)遺伝子(iii)PHY3(C712A)遺伝子(iv)PHY3(C966A)遺伝子 (v)PHY3(C712A+C966A)遺伝子(vi)PHY3(H1183L)遺伝子(vii)GUS遺伝子:コントロール Agrobacterium感染植物体から得られる種子を薬剤含有培地で発芽・生育させて選抜し、T1植物を得た。得られたT1植物体から粗タンパク質を抽出し、抗PHY3ポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロッティング解析を行い、目的タンパク質の発現・蓄積が確認される系統を選抜している。また、これまでに選抜された形質転換体において自殖後代の植物体の生育・種子回収を行っており、導入遺伝子についてホモの系統を確立することを目指している。
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