タバコ培養細胞BY-2において、小胞体とその輸送に関与していると考えられているミオシンXIである175-kDaミオシンとの関連性を、ショ糖密度勾配超遠心分画法を用いて検討した。GFP-小胞体を発現しているBY-2細胞から、GFP-小胞体を含むミクロゾーム画分と可溶性画分からなる分画を調製し、0.6/1.0/1.5Mショ糖からなる密度勾配超遠心にかけ、GFP-小胞体と175-kDaミオシンの分布を解析した。両成分は同じ画分に分布していた。また遠心後に得られたGFP-小胞体をミオシン重鎖抗体で免疫染色した結果、ミオシンはGFP-小胞体表面上に存在していた。これらの結果から、一部の175-kDaミオシンは強固に小胞体に結合していることが示された。しかしながら、ミオシンが結合しているGFP-小胞体の運動活性を、シャジクモ節間細胞のアクチンケーブルや、植物ビリンによって束化させたF-アクチンを用いた運動再構成系によって解析したが、GFP-小胞体の運動は観察されなかった。この結果は、小胞体に強固に結合した175-kDaミオシンの活性は不活性化されている可能性が示唆され、現在この機構を解明しているところである。 それと同時に、GFP-小胞体画分にGTPを加えると、細胞表層で観察される小胞体のチューブ状構造が形成されることを見出した。必要なGTP濃度はμM程度であり、ATPやGDPを加えてもチューブ形成は誘発されない。このような現象はアフリカツメガエル卵細胞から単離された小胞体で既に報告されている。しかしいくつか点について、カエル卵の小胞体チューブ形成とBY-2細胞のそれとは異なっている。現在この現象に関しても、詳しく解析中である。
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