研究概要 |
ブラシノステロイド(BR)シグナル伝達経路は、BR非感受性やBR阻害剤非感受性を示す変異体の単離を通して、受容体Bri1をはじめシグナル伝達のコンポーネントが同定されている。しかし、BRの制御を通して、植物の形態形成がどのように制御されているか未解明である。BR生合成の制御機構はほとんど未解明である。BR感受性は環境要因や器官特異的に異なることが知られているがその制御機構も不明である。昨年までに、オーキシンのシグナル伝達に関与することが知られている転写調節因子Aux/IAAがブラシノステロイドの器官特異的な感受性を制御していることを報告した(PlantJ.45:193-205)。また、ブラシノステロイド6位酸化酵素遺伝子の発現制御について調べるため、BR6ox1:GUS,BR6ox2:GUSの2つのレポーター遺伝子をシロイヌナズナゲノムに導入した遺伝子組み換え体を用いて、芽生えにおける両遺伝子の発現パターンを調べた。本年度はこれらレポーター遺伝子の発現パターンと定量RT-PCRを併用しながら、2つのブラシノステロイド生合成遺伝子の発現部位、時期をさらに詳細に調べた。その結果、BR合成酵素のうち、活性型BR合成に関わるBR6ox1,BR6ox2,Dwf4などの酵素をコードする遺伝子の発現が、光照射後に、フックと子葉で強く誘導された。この遺伝子発現誘導は、光照射によるフックの解消や、子葉の拡大、子葉に於ける維管束の発達に先だって起こることが分かった。また、これら3つの植物の応答は、BR生合成の阻害剤Brzで抑えられることを確認しつつある。よって、フックの解消や子葉の発達などの光形態形成の諸過程がBR生合成の活性化を介して制御を受けていることが初めて明らかになってきた。
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