研究課題
本研究は、魚類の浸透圧調節ホルモン、特に昨年初めて鉱質コルチコイドの存在が示唆された副腎皮質ホルモンの作用を世界に先がけアップデートすることを目的としている。広塩性魚類の浸透圧調節器官の一つである消化管を用いる。消化管は海水中では上皮透過性が高まり水の吸収能が増大する。本年度はまず、上皮全体で、海水適応時にコルチゾル-糖質コルチコイド受容体(GR)の誘導に伴いアポトーシスが、淡水中でプロラクチン(PRL)系の誘導に伴い細胞増殖が誘導されることを解明した。これは上皮が海水中では単層で淡水中では多層であること、及び透過性の変化とよく合っている。次に、アポトーシスはコルチゾルにより、細胞増殖はコルチゾルとPRLにより誘導されることを見出した。"鉱質コルチコイド"デオキシコルチコステロンや変態時のアポトーシス誘導因子である甲状腺ホルモンは効果がなかった。また、アポトーシス細胞にはGRが、分裂細胞にはPRL受容体とGRが存在した。よってコルチゾルの"双方向"の作用は、鉱質コルチコイド受容体は介さずGRを介すことが示唆された。以上から消化管上皮は、海水中ではコルチゾル-GRがアポトーシスを誘導し単層となる。淡水中ではPRLとコルチゾルが細胞増殖を誘導し多層となると思われる。現在、メダカの食道培養系を確立しており、これらのホルモンの役割を決定する予定である。今後は、cDNAアレイ解析などにより、分子機構を検討する。
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