クメステロールの雄性化効果に対するプロゲステロンの作用:クローバ類に含まれるクメステロール(CM)3mgを生後5日目の雌新生ラットに皮下投与すると脳機能が雄性化することを昨年度報告した。今年度はエストロゲンの働きを抑制するとされるプロゲステロンが植物エストロゲンに対しどのように作用するか調べた。1mgエストラディオール(E2)、3mgCM、1mgE2+0.5mgプロゲステロン(P)、3mgCM+0.5mgP、ごま油(対照群)を生後5日目の雌ラットに皮下投与し、性周期形成機構、ロードーシス発現をみた。その結果、E2、CM群は膣開口は対照群に対し早まリ、卵巣重量も対照群より有意に小さくなった。性周期もE2、CM群は正常な周期を示さなかった。一方、プロゲステロンを投与されたE2群とCM群は膣開口日も卵巣重量、性周期とも正常であった。ロードーシス行動に関しては、E2、CM群は強く低下したが、プロゲステロン投与群は対照群に近い高い値を示した。この結果は、エストロゲンβ受容体に強く作用するクメステロールに対してもプロゲステロンが抑制的に働き雄性化作用を抑えるということを示している(未発表)。 成熟ラットの発情誘起に対するクメステロールの効果:成長後のロードーシス発現にたいする植物エストロゲンの効果も調べた。1mgCMを卵巣除去ラットに皮下投与し、投与44時間後に0.5mgPを投与し行動を見た結果、どれも発情状態を誘起することはなかった。閾値下(3-5mg/kg bw)のエストラジオールベンゾエート(EB)を皮下投与した上で、それらの植物エストロゲンを投与しても顕著な発情誘起はみられなかった(未発表)。このように成熟雌ラットの発情誘起にエストロゲンβ受容体の関わりは弱い可能性が示唆された。
|