鋤鼻系はフェロモンの受容、情報処理をおこない、生殖をはじめとする社会行動に関係し、動物にとって重要な神経路である。これまでの電子顕微鏡の解析により、交尾にともなうフェロモン記憶形成の際に、副嗅球内の相反シナプスが形態変化を起こすことを明らかにした。シナプス可塑性のメカニズムをさらに詳細に検討するために、(1)鋤鼻器と副嗅球ニューロンの共培養系の確立、および(2)共焦点レーザー顕微鏡を用いてリアルタイムイメージングをおこなうことによりシナプスの形態変化を解析した。 鋤鼻器と副嗅球ニューロンの共培養 鋤鼻ニューロンを刺激することにより副嗅球でおこるシナプスの変化を培養系で解析するため、鋤鼻器と副嗅球ニューロンの共培養の確立を試みた。副嗅球ニューロンに起こる変化を解析するため、リポフェクション法を用いて、GFP-アクチンでニューロンを標識し、樹状突起の形態変化を共焦点レーザー顕微鏡で解析した。この結果、単独培養に比べて共培養を行った場合、副嗅球ニューロンの成熟が進むことがわかった。したがって、共培養が生体と同じように機能していることが明らかになった。 培養副嗅球ニューロンのリアルタイムイメージング 胎齢20日のラットから副嗅球を取り出し、3週間以上培養後リポフェクション法を用いて、GFP-アクチンおよびGFP-シナプトフィジンとでニューロンを標識し、ニューロンの樹状突起の形態変化を、共焦点レーザー顕微鏡を用いてリアルタイムイメージングにより観察した。薬理学的にニューロンを興奮することにより、樹状突起上のスパイン様構造に形態変化が認められた。 共培養系およびリアルタイムイメージングが確立したので、今後副嗅球シナプスの形成・可塑性の研究をすすめるとともに、この培養系を利用して、鋤鼻ニューロンを刺激することにより副嗅球でおこるシナプスの変化を解析することを計画している。
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