ザリガニは尾部への接触刺激に対して回避行動を示すが、その応答パターンはザリガニの成長に伴って逃避型のダート応答から防御型のターン応答へと変化する。またザリガニは縄張り社会性を持ち、優劣個体間地位が成立する。優劣個体間地位がザリガニの回避行動の応答パターンへ及ぼす影響を神経行動学的に解析した結果、 (1)1ヶ月以上単独隔離しておいた二匹のザリガニを一緒にすると、すぐに闘争をはじめ20分以内に優劣個体間地位が確立し、その後はほとんど闘争が起こらなくなった。 (2)ペアリング前には尾部への接触刺激に対し、90%以上の確率でダート応答を示していた小型ザリガニは、闘争の結果優位地位を占めることで、すぐに接触刺激に対し、大型ザリガニが示すようなターン応答を90%以上の確率で示すようになった。 (3)ペアリングの結果、劣位になったザリガニは、ほぼ100%ダート応答を示し続けた。また尾部への少し強いプレス刺激に対し、テイルフリップで応答する確率が顕著に増加した。 (4)優劣成立後ペアリングを維持している間、優位個体は主にターン応答で応答し続けたのに対し、優劣成立後すぐにそれぞれの個体を再隔離した場合では、優位個体は三日後までは主にターン応答を示し、その後徐々にダート応答を示す発現確率が増加し、一週間後には90%以上の確率でダート応答を示すペアリング前の状態に戻った。 (5)細胞内記録法を用いダート・ターン応答切り替えの神経回路の解析を進め、多くの生理学的データが集まってきている段階である。
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