ショウジョウバエ網膜の色素顆粒上には、visual cycleに関わる可能性のある2種類の蛋白質が存在する。一つはdehydrogenase/reductase(PDH)であり、レチナール/レチノールの変換に、もう一つはfatty acid-binding protein(FBP)で、レチノイドの輸送に関与することが予想される。そこで、これらの蛋白質について、visual cycleでの役割を検討するため、まず、FBPを大腸菌で発現させ、そのレチノイド結合活性を検討した。発現誘導した大腸菌の可溶性画分にレチノールを加えてインキュベートし、非変性電気泳動を行って蛋白質を分離した後、UV励起蛍光を観察することにより、レチノール結合能を調べた。その結果、FBPを同定されたバンドに特異的な、レチノールの結合が確認された。次に、大腸菌で発現させたFBPおよびPDHを抗原として、これらの抗体を作成した。この抗体を用いて、電子顕微鏡レベルの免疫組織化学実験を行った結果、FBPは2次色素細胞に、PDHは1次および2次色素細胞に局在し、視細胞には存在しないことがわかった。また、両蛋白質ともに、色素細胞内では色素顆粒と細胞質の両者に分布していた。光条件による局在変化についても検討したが、明暗両条件下での差は認められなかった。 次に、FBPの生理機能を検討するための準備として、FBPの発現量をコントロールしたハエの作成を行った。発現量の抑制にはRNAi法を用い、過剰発現には3 x FLAGを付加したFBP遺伝子を導入した。これらのハエでのFBPの発現量を先に作成した抗体を用いて測定した結果、RNAiにより発現量は約30%に、過剰発現では約180%に変化していることがわかった。来年度は、これらのハエを用いたFBPの生理機能の解明は、引き続き来年度に行う予定である。
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