研究課題
基盤研究(C)
昆虫の光周性に関わる神経機構を明らかにするため、本研究ではルリキンバエの生殖休眠を調節する光周性に関わるニューロンネットワークを形態学的に解析し、さらにそこに含まれる制御物質を探索した。これまでに明らかになっている概目時計ニューロン(小形PDFニューロン)から休眠調節ニューロン(脳側方部ニューロン)への神経連絡、そして生殖に重要な脳間部ニューロンに着目し以下の結果を得た。光周性ニューロンネットワークの形態学的解析:PERIOD免疫陽性細胞を調べた結果、脳内に5群の細胞体が染色された。また、二重染色の結果、そのうち2群がPDF(pigment dispersing factor)に対して免疫陽性を示し、小形PDFニューロンにPERIODが存在することがわかった。さらに、細胞体領域の除去実験から、小形PDFニューロンが光周性機構に関与すると考えられた。これは概日時計の神経機構が光周性に関与することを示した初めての例である。免疫組織化学とバックフィルにより脳間部には FMRF アミド、脳側方部にはFMRFアミド、PDF、コレシストキニン、コラゾニン様ペプチドを含むニューロンが存在すると考えられた。光周性ニューロンネットワークに含まれる制御物質の探索:MALDI-TOF MS(マトリックス支援型レーザイオン化飛行時間型質量分析法)および ESI Q-Tof MS MS/MS(エレクトロスプレーイオン化四重極飛行時間型質量分析法)により、脳間部にマイオサプレッシンおよび SIF アミド、脳側方部に二種類のコラゾニンを確認した。リアルタイムPCR法を用いて、時計関連遺伝子 periodとtimelessの発現解析を行った結果、頭部では光周期条件下で両遺伝子ともに明期のはじめに発現量の低下を示す振動パターンが観察され、periodに関してこの振動が全暗条件で継続することがわかった。
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