本研究は、基本体制は脊椎動物のものとほぼ同じながら、僅か2600の細胞からなるホヤ幼生の神経及び筋肉の活動をイメージング法により計測することを目的としている。それらの興奮状態をCa^<2+>指示タンパク質カメレオンの蛍光変化(蛍光エネルギー移動(FRET))より観測した。 測定系構築の為、浜松ホトニクス社製カラー3CCDカメラを申請したが、予算減額のためそのカメラを購入できなかった。代替に高感度モノクロCCDカメラを購入しFRET計測を行ったが、蛍光変化がCa^<2+>変化よるものなのか断定できなかった。そこで、理研の宮脇博士の協力を得て、同研究室のカラー3CCDカメラを用いて実験を行なった。2波長計測により筋肉の活動に伴うCa^<2+>の上昇を捉えることができた。さらに各細胞でのCa^<2+>変化を解析した結果、最前方の筋肉が神経からの刺激によって発火し、後方の筋細胞に伝わって行くことが示唆された。ホヤ幼生では筋細胞間のギャップ結合を介して活動信号が伝達されていると言われているが、実験的証拠はない。そこで、ギャップ結合阻害剤(octanol)による、筋組織におけるカルシウムシグナルへの影響について調べた。コントロールではCa^<2+>の変化が速やかに全筋肉に伝わっていくのに対して、阻害剤を添加した幼生では特定の筋細胞にCa^<2+>が蓄積し、それが伝搬しなかった。この結果は、ホヤ筋肉ではギャップ結合を介してCa^<2+>が筋肉全体に伝達していることを強く示唆する。 次にカメレオンの神経細胞への適用を試みた。コリン作動性神経特異的に発現するプロモータを用いて、それらの神経の活動を、カメレオンを用いた系で調べた。尾部前方の運動神経節には、5対のコリン作動性神経が存在する。それらの神経が幼生の尾部運動に伴い発火することが分かった。さらに個々の神経の活動を調べると、前から3番目の神経が特に活発に発火していることが分かった。
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