研究概要 |
本年度の研究成果は以下のとおりである。 1.ネオンテトラ皮膚の虹色素胞は、500mm付近の光に対して最もよく反応することは昨年度すでに報告した。虹色素胞に発現する遺伝子は3種で、1種はロドプシン、Pi-RH1であった。他の2種は、blind Mexican cavefishの特異な錐体緑(g101ならびにg103と高い相同性を示すPi-green1、Pi-green-2であった。他の魚種の錐体緑がRH2(ロドプシンに近い錐体視物質)に属するのに対して、g101、g103、Pi-green1、Pi-green-2はヒトの緑と同様、錐体赤のグループに属する視物質である。すなわち、ネオンテトラの緑視物質は分子進化的に極めて興味深いものであることがわかった。Pi-green1、Pi-green-2は目にも発現している。なお、目に存在する錐体赤は、虹色素胞には発現していなかった(zoo1.Sci.,2006)。 2.錐体緑オプシンに対する抗体を用いて、ネオンテトラ皮膚におけるオプシンの発現を調べたところ、真皮に存在する虹色素胞の層にのみ発現が認められた。ロドプシン抗体では弱いシグナルが虹色素胞層に認められた。 3.光感受性虹色素胞を多く含む皮膚部位からタンパク質を抽出、抗体を用いてwestern blottingを行い、バンドを認めた。オプシンの存在が示唆された。 4.細胞内情報伝達に関係する各種酵素の阻害剤や活性剤を用いて検討した結果、光情報の細胞内伝達に関与するのはcAMPであり、その減少が光に対する反応を誘起していることが示された。また、明所で百日咳菌毒素により処理されたネオンテトラ虹色素胞は、暗所に戻しても光反応から回復しないことから、Giαが関与することが示唆された。 5.ネオンテトラ虹色素胞のホスホジエステラーゼ(PDE)のタイプはIV型であった。この結果からも、虹色素胞での細胞内二次メッセンジャーはcAMPであることが示唆された。
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