1970年以来継続して行なってきたベンケイソウ科の系統分類学的研究の総決算とレて、研究の中心としたベンケイソウクレード全体を対象とした系統分類体系の構築に関る諸問題を中心に研究を進めた。また、このクレードに関連して十分な検討がこれまでなされていなかったアジア大陸中央部と北アメリカのベンケイソウ・フロラの分類学的検討をも行なった。系統分類体系の構築に関連しては、中国四川省に分布の中心があるイワレンゲ属(Orostachys)Schoenlandia節について分子遺伝学的解析を行なった。その結果から、この節がイワレンゲ属の他の節のすべてとは別のクレードをなすこと、またそのクレードがテンジクイワレンゲ(Sinocrassula)と姉妹関係になることが判明した。さらに比較形態学的な分析を行なった結果、Schoelllandia節は体系上イワレンゲ属とは独立して扱うのが妥当であるとの結論をえ、既存名中の合法名を探索し、Kungia属とした。この結果は目下論文にとりまとめ中であるが、Kubitzkiが編集するThe Families and Genera of Vascular Plants中のベンケイソウ科の体系(2007)に反映するため、ullpublished dataとして先取りのかたちで発表された。 アジア中央部のベンケイソウクレードに関する研究として、崑崙山脈でのイワベンケイ属の種多様性を研究し、その成果を論文に取りまとめ中である。また、若林三千男(元東京都立大学)と共同でイワベンケイ属の細胞遺伝学的研究を進めていたが、その成果を発表すべく取りまとめを行った。 北アメリカ産のベンケイソウクレード・フロラをまとめ、明年中に出版予定の北アメリカ植物誌(Flora of the North America)の原稿として投稿した。
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