1.Chlamydomonadalesに属するGloeomonas属3株の形態と分子系統 Gloeomonas属は遊泳性の単細胞緑藻であるが、2本の鞭毛は互いに離れているためにChlamydomonas属とは異なるとする考え方と、Chlamydomonas属に含める考え方があった。透過型電子顕微鏡をもちいたG.lateperforataの観察により、鞭毛基部が離れているだけでなく、鞭毛装置構造にみられる繊維などの構成要素は、Chlamydomonasのものとは大きく異なっていた。18SrDNAをもちいた分子系統解析の結果、Gloeomonas属の3株は単系統を形成してCW型に含まれ、さらにChloromonas属と姉妹群を形成した。このことから、Gloeomonas属の鞭毛装置構造は典型的なCW型ではないが、この型に含まれる変異の1つであると推定された。またピレノイドを欠くことがGloeomonas属がChloromonas属と姉妹群になるための1つの共通形質であると考えられる。 2.ウキクサSpirodelaの茎葉体に共生する緑藻の系統 浮水性の水草であるウキクサの茎葉体に緑藻が共生していることを発見し、その緑藻を分離して培養したところ、栄養細胞はピレノイドをもつ単細胞性であるが、分裂して短い糸状体やサルシノイド状を形成する。遊走子は観察できなかった。18SrDNAの塩基配列による系統樹から、この緑藻はChaetopeltis目やChaetophora目などと近縁であるが、どちらの目にも属さないことと、アオウキクサに共生するCW型の緑藻Chlorochytrium lemnaeと遠く離れていることが明らかになった。この緑藻の正確な分類的位置を今後、研究する必要がある。 3.ポーランドの亜鉛・鉛鉱山の土壌から分離された真眼点藻の分子系統による同定 ポーランドLublinのBarbara Pawlik-Skowrouska教授は亜鉛・鉛などの重金属にたいする土壌藻類の耐性について研究している。彼女が分離した藻類は当初、CW型緑藻だと判断されていたが所属が不明であるために、同定を依頼され、本研究に関連する内容と判断して共同研究を開始した。分離株の塩基配列を調べたところ、この藻類は緑藻ではなく、真眼点藻のEustigmatos属であった。Eustigmatos属も土壌藻類として知られているものであり、その生理生態的特性を明らかにするために、今後も共同研究を継続する予定である。
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