主として土壌に生息し鞭毛が時計回りに配列する緑藻(CW型グループ)の分子系統関係を調べたところ、従来は4目に分類されてきたCW型グループは単系統を示した。その結果をもとに、分類に重要だと考えられてきた形質を系統学的観点から評価した。以前、目レベルの形質だと考えられた栄養細胞が四分子やサルシノイドを形成するという形質は、このグループのなかのいくつかの異なるクレードで独立して出現したので、目レベルの特徴とすることはできないという主張を支持した。栄養細胞が成長にともなって多核になる性質はCW型グループ内のいくつかのサブクレードで並行的に進化した。葉緑体の形態のうち、星状の葉緑体は異なる系統で出現するが、実際にはAxil型や側壁が変形したものと区別しにくいことが多いので、十分な観察が必要であることを指摘した。また網目状(スポンジ状)になる特徴は一部の枝に出現し、しかも多核と単核で別のサブクレードに分けられるなど、葉緑体の形態が共有派生形質になっていることがみられた。遊走子の細胞壁の有無、層構成などはCW型グループ内のいくつかのサブクレードで共有派生形質になっていた。また鞭毛の長さ、発出方向、鞭毛装置構造の構造も特定のサブクレードで見られる特徴であった。Astaxanthinの蓄積は異なるサブクレードの共有派生形質として出現し、一つのクレード内では運動性と非運動性の栄養細胞をもつものが含まれていた。土壌以外の生息域として海水に生息するものが単系統を構成し、淡水域から二次的に分化したことが明らかになった。淡水域で他の基質に固着する性質をもつものはいくつかの系統で進化したことが明らかになった。アオウキクサの仲間のヒンジモに共生する緑藻は、栄養細胞と遊走子の形態が似たものと近縁関係があることが認められた。
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