環日本海地域に遺存固有種として分布するトミヨ属種群について、種分化の過程を考慮に入れた分類の再整理を研究目的とし、アロザイムとミトコンドリアDNAを遺伝的マーカーとして解析に着手した。 アロザイム解析においては、眼、肝臓、筋肉の各組織を用いて予定した12酵素23遺伝子座の内10酵素での遺伝子座の検出ができ、これまで採集されていた個体の解析に取りかかることができた。ミトコンドリアDNAの解析では、Miya & Nishida(2000)の方法により、Long PCR法により、ミトコンドリア全領域の増幅を試みた。さらにイトヨのミトコンドリアDNA全領域の塩基配列データを基に、ミトコンドリアDNAの10の領域のプライマーを設計した。イトヨのミトコンドリアDNA塩基配列を基にしたそれぞれのプライマーセットがトミヨ属でも有効かどうかを3つのプライマーセットを用いて検証した結果、12SrRNAで219bpおよび16SrRNAで190bpの2つの領域のプライマーセットで塩基配列データが得られた。解析対象の塩基数や、解析個体群とその個体数はまだ少ないが、既に設計してある残りのプライマーセットを用いることで、環日本海に分布する遺存固有種個体群間での分化程度を推定するのに十分なミトコンドリアDNA塩基配列の情報が得られる目安がついた。 今年度計画していた東北地方、特に山形県での標本の採集は必ずしも順調ではなかった。その理由は、山形県に分布する雄物型は県の天然記念物に指定されており、今年度は県の許可を得られなかった。しかし、山形県の担当部局に十分に研究の内容を説明をし、理解を求める努力をした結果、来年度はその許可が得られる見通しがついた。
|