研究概要 |
本年度は、ノトテニア亜目魚類には赤オプシンはないとした認識(Pointer et al.,2005)を修正するため、昨年度にLepidonotothen nudifronsから得られた赤オプシン遺伝子断片の塩基配列をもとに設計したプライマーによるRACE実験を行い、本種の赤オプシン全長を決定した。また、Trematomus newnessiiでも全長を、T.bernacchiiおよびGobionotothen giberifronでは3end側の遺伝子断片を得た。現在、後2種の解析をすすめるとともに、ノトテニア亜目魚類における赤オプシンの存在に関する論文を鋭意執筆中である。 一方、上記アメリカの研究グループは、申請者が先に網膜における紫外線受容細胞の存在を報告したTrematomus bernacchii (Miyazaki et al.,2001;2002)においてはUVオプシン遺伝子が無いとしていることに絡んで、本年度、申請者らがこれまでに蓄積してきたスズキ目魚類のUVオプシン遺伝子配列の特徴に基づき設計した特異的プライマーによる独自のPCR設定を行い、同種からUVオプシン遺伝子の単離を試みた。その結果、同種からUVオプシン遺伝子3endを得ることに成功した。また、アメリカの研究グループが同じく成魚ではUVオプシン遺伝子がないとしたCampsocephalus gunnariについては、紫外線感覚の成長に伴う変化を知る目的で、本種稚魚についての網膜組織学的検討、およびUVオプシン遺伝子の単離を試みた。その結果、稚魚期の網膜には紫外線受容細胞が存在することを確認するとともに、UVオプシン遺伝子の全長配列を決定することに成功した。本種は、南極海における成魚乱獲やオキアミトロールにおける稚魚混獲による資源の減少が危惧されており、これらの結果は、本種の成長に伴う視覚行動特性の変化を知る上での重要な知見である。これらT.bernacchiiおよびC.gunnariの結果についても、それぞれ研究論文を鋭意筆中である。
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