研究課題
基盤研究(C)
南極で固有の進化を遂げたノトテニア亜目魚類8科における紫外線感覚を網膜組織学的ならびに分子生物学的に解析することで、交雑という遺伝子流動因子の影響を排除した、魚類における同感覚の継承と消失のメカニズムを探ることを目的とした。1)ノトテニア亜目魚類8科15種の網膜について紫外線受容細胞(UV-cone)の有無を組織解剖学的に調べた。その結果、今回調べた15種では、UV-coneは最も原始的な方から6科までは存在したが、7科めのBathydraconidaeには存在する種と欠如する種が混在した。また、最も南極に特化したChannichthyidaeでは調べた2種とも欠いていた。このことから、同細胞は本亜目の種分化の過程で失われる形質であると推察された。2)紫外線オプシン遺伝子は全長が1008bpで336残基のアミノ酸に翻訳された。3科9種による分子系統樹解析では、科ごとでクラスターが形成された。さらに解析魚種数を増やす必要があるものの、種分化系統樹と一致する可能性が示唆された。また、Channichthyidaeに属する魚にも紫外線オプシン遺伝子があることがわかった。3)Channichthyidaeに属するChampsocephalus gunnariの稚魚には紫外線オプシン遺伝子が発現していた。錐体細胞モザイクは網膜中央部、辺縁部、およびその中間の同心円部で異なり、UV-coneは中同心円部にのみ存在した。1)、2)の結果とも併せて考察し、UV-coneが成魚で欠如する種であっても、それらの稚魚期にはUV-coneが存在し、紫外線オプシン遺伝子が発現している可能性が示唆された。4)その他の青、緑、赤オプシン遺伝子はいずれの種でもそれぞれ1056、1056および1068bpで352と356残基のアミノ酸に翻訳された。他の硬骨魚類との相同性は赤よりも海中により多く存在する波長域の青や緑オプシン遺伝子で低かった。このことは、魚類が生息水深や生息場所の光環境に適応しつつ、緑オプシン遺伝子と青オプシン遺伝子を種特異的に進化させていることを意味するのではないかと考えられた。
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