カリフォルニアMojave砂漠に生育するカミソニアリフラクタには、開花習性に関する形質、花の開閉、花のサイズ、花の寿命、開花時期、個体サイズの形質に、量的変異あるいは多型が見られる。2005年度、量的遺伝学的手法を用いて、この各形質に作用している自然選択のタイプと淘汰圧の強さを求めた。2006年度、これらの形質の遺伝率を求めるために、京都大学の一室にメタルハライドランプを設置し、日長13時間、室温20℃に設定し、栽培室を造り、移植栽培実験を開始した。調査した集団の50個体、各50粒の種子を、シャーレに播き、毎日補水し、インキュベータ内で発芽させた。種子の発芽は全く同調せず、インキュベータの温度設定を変化させる度に少数の種子が発芽するのみであった。この状態が2ヶ月続き、まだほとんどの種子は発芽しないため1mm程の種子に針で穴を開けた。穴を開けると、ほとんどの種子は2ム7日以内に発芽した。発芽した実生を砂の入ったビニールポットに移植し、栽培室で育てた。最初、水やりが強く砂が動いたことや、砂が乾燥したことが原因で、多くの実生は死んでしまった。そのため、もう一度、同じ50個体、各25粒の種子をシャーレに播いた。1週間保水後、種子に針で穴を開けた。種子が発芽するまでの日数および最初の個体が花をつけるまでの日数は、種子間、個体間で大きく変異した。合計約500個体ほど開花した。1個の花の花粉を8個の柱頭に受粉し、これを65個の花で行い、F1(65x8)を作成した。現在、このF1の種子を収穫している。この実験が長引いている理由は、保水すると花芽を形成し、花を咲かせることである。遺伝率を算定するために必要なF2個体の形質測定は1年先になりそうである。さらに、この実験で使用しなかった花を用いて、自家不和合性のタイプの決定、S遺伝子のAllele数を決定する実験を行っている。
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