ウミグモ類については、分類上の位置と卵黄量から発生様式が異なると考えられるフタツメイソウミグモAmmothella biunguiculataとツメナガウミグモPropallene longicepsについて、和歌山県白浜町・静岡県下田市・島根県隠岐の島町にて採集を行った。抱卵しているオス個体から胚を採取・固定した。オスが抱える一塊中の卵は同時に受精したと考えられるので、そこから一部ずつを採取・固定することによって、差次的に胚を観察できる。固定胚標本については、現在DAPIによる蛍光核染色により、胚発生の概要の観察を進めている。またそれぞれの種の標本からtotal RNAを抽出し、体節形成遺伝子の一つであるengrailedのユニバーサルプライマーでPCRを行い、クローニングを進めている。またin situ hybridizaionの固定条件を、同じ海産節足動物であるウミホタルを使って検討し、通常用いられるものとは異なる組成で、観察に適する条件を見出した。。 クマムシ類については、Milnesium属に属する陸生クマムシ類を、コンスタントに採集できる方法を確立した。採集個体には、産卵中の個体も見られ、脱皮殻中に産卵された胚も容易に見つかることから、今後の胚発生の記載作業に用いることが出来るであろう。このクマムシについては、現在正確な同定作業を行っていると共に、寒天培地とワムシを使った室内飼育系の確立を試みている。
|