研究概要 |
ウミグモ類の孵化幼生及び初期令幼生について、孵化幼生としてプロトニムフォン幼生を出す種3種と、付着幼生を出す種1種を用いて、光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡による観察を行い、両者の間に、体内の卵黄の有無、腺細胞の有無、附属肢の爪の有無といった相違点を認めた。またカンブリア紀より発見されたウミグモ類幼生の化石との形態比較を行い、附属肢のパターン等から、現生のプロトニムフォン幼生を出すタイプの3令幼生に相当することを示すと共に、頭部第一附属肢が現生種のように体の背中側からではなく、腹側から前方に向かって突出しているという相違点を指摘した(Miyazaki & Ikuta, 2006)。 これまで記載の乏しかった、ウミグモ類卵形成過程における微細構造学的変化を、2種のウミグモ類を用いて観察した。卵原細胞間の細胞間橋(intercellular bridge)の存在を、ウミグモ類で初めて確認し、卵原細胞が形成細胞内でクラスター形成を行っていることを示した。ウミグモ類では哺育細胞が欠如していることから、多くの節足動物で見られるような濾胞形成を行わず、原始的な昆虫類等で見られるような、二次的な分裂を起こして卵母細胞へと成長していくと考えられる。その他、卵柄細胞の卵黄形成に対する寄与と、小胞体槽内に存在する高電子密度体が、卵黄前駆体であることを示唆した(Miyazaki & Bilinski, 2006)。 胚発生に関しては、フタツメウミグモ胚のDAPI染色による観察を行ったが、条件設定が不十分であったのと、観察ステージ数が少なかったため、胚発生段階表を作成するには至らなかった。 発生遺伝子については、ウミグモ類において、engrailedと考えられる部分配列をクローニングしたが、その後の検証によって、コンタミの可能性が指摘されたため、現在再クローニングを試みている。
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