研究課題
琉球列島を中心として隔離分布する植物から数種を選んで、材料を収集し、系統地理学的研究を行うための予備的な観察を行った。琉球列島および台湾産のチャボイナモリ(アカネ科)は、サツマイナモリ属の種に広く見られる異型花柱性は発達せず、自家受粉により種子を生産していることが判った。今後は、系統地理学的な解析を進める必要がある。東アジアの亜熱帯域に隔離分布し、国内では与那国島にのみ産するヨナグニノシラン(ユリ科)の核型を調べたところ、与那国島と台湾のものは同一の核型を示し、その一方でヨナグニノシランは近縁なノシランとは異なる核型を持つことが判った。今後、分子系統地理学的な解析を進める。琉球列島と植物相の上で最も関わりが深い台湾に産するタイヤルソウ(アカネ科)の分子系統学的な研究を行い、タイヤルソウは台湾固有の単型属ではなく、琉球列島および台湾に産するサツマイナモリ属に含まれることを明らかにした。琉球列島中部の一部の島嶼に固有のアマミイナモリは、基本種のサツマイナモリが二倍体であるのに対して四倍体であり、異型花柱性を持たないことを示した。分子系統学的な研究により、アマミイナモリは琉球列島でサツマイチモリの倍数化により生じたのではなく、琉球列島に産しないサツマイナモリに近縁な祖先種が倍数化して生じた遺存種であることを明らかにした。琉球列島の少数の島嶼に隔離分布するシソクサ属(ゴマノバグサ科)、ヒメスイカズラ(スイカズラ科)、カンアオイ属(ウマノスズクサ科)、ヤブラン属(ユリ科)の採集を行い、外部形態と核型の観察を行った。その結果、島喚問で多少の分化が認められることが判った。今後、分子系統地理学的な解析を進め、琉球列島におけるこれらの種の進入と分化の過程を明らかにしたい。
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Journal of Plant Reserach 120(印刷中)
琉球列島の絶滅危惧植物I、沖縄県産絶滅危惧植物の現状.日本の植物園における生物多様性保全 (印刷中)
琉球列島の絶滅危惧植物III、何をすべきか-植物園を中心に-.日本の植物園における生物多様性保全 (印刷中)
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