ヌタウナギ類では、抗体非依存的に活性化されオプソニン活性を発現する原始的な補体系が存在し、主要なオプソニン分子は補体第3成分(C3)の限定分解産物C3bであることを明らかにしている。また、この分解反応(活性化)に関与する補体成分の解析を進め、ヌタウナギでもマンノース結合レクチン(MBL)結合セリンプロテアーゼ(MASP)-1/3遺伝子が存在し、その構造がヒトの同遺伝子に酷似していることを明らかにした。さらに、同遺伝子に由来する二つのmRNAの存在を示し、MASP-1及び同-3タンパク質が、原始的補体系を構成する成分としてヌタウナギ血清中で機能している可能性を示唆した。しかしながら、同種MASPのタンパク質レベルでの研究が進んでいないこともあり、C3の活性化機構については、未だ不明な点が多く残されている。一方、ヒト・レクチン経路では、血清中のMASPはMBLに結合し複合体を形成していること、またMBLは微生物上の糖鎖(N-アセチルグルコサミン(GlcNAc))やマンノースに結合特性を示し、補体系レクチン経路の活性化に必須の認識分子であることが示されている。そこで、本研究では、円口類における原始的補体系の全貌を解明する一環として、ヒト等MBLの糖鎖結合特性、並びにその機能的存在様式(複合体の形成)に着目し、ヌタウナギ補体系における認識分子等の同定を試みた。ヌタウナギ(Eptatretus burgeri)血清から糖鎖認識分子等を分画するため、GlcNAc結合アガロースを担体とするアフィニティー・クロマトグラフィーを行った。同担体に結合した血清成分を溶出し、HPLC並びにSDS-PAGEによる分画、PVDF膜への転写の後、可視化されたタンパク質(19kDa、26kDa、27kDa及び31kDa)のN末端アミノ酸配列の解析実験が進行している。
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